認知症のおばあちゃん。その4

今日1人の患者様が退院されました。


その方は何年か前にも1度入院されていた方で、
今回が2回目の入院でした。


以前の入院時に比べ、認知症も進行しており、
案の定リハビリは苦戦を強いられました(汗)




認知症の症状の1つに近時記憶障害があり、
少し前の出来事などを覚えることが困難なことが多いです。


「立つときは必ず車椅子のブレーキかけてね。」と説明しても、
数分後には先ほど注意したことは忘れており、ブレーキかけないまま立ち上がってしまう。
(判断機能障害なども含まれているかも)
または「トイレ行くときは必ずナースコール鳴らしてね」と説明しても、
気づけば1人でトイレに行ってしまっている。


認知症の患者様が多いと、このようなことから転倒・転落の事故に繋がるリスクも高くなります。
なので、分りやすい目印を作るなどの工夫、何度も繰り返し説明するなど粘り強い対応が必要となってきます。



この方も、重ねて説明、注意はしてきていましたが、
やはりいつの間にか自分1人で歩いてしまい、特に夜勤の時間帯は徘徊も重なり、
夜勤のスタッフは本当に苦労されたと思います。
調子が良いときは歩行も安定しているので、大きな転倒事故などはありませんでしたが、
既往歴の関係もあり、やはり能力的にも認知症の症状的にも見守りは外せない方でした。




スタッフの名前もなかなか覚えることが難しく、
毎日顔合わしていても「あんた誰?」みたいな状態なのですが、
入院期間が過ぎていくにつれ、
「名前は覚えていないけど、顔は分かるよ」から始まり、


ぁ「私の名前わかる?」
患「…なんだっけ?」
ぁ「ヒントは?あ?から始まるよ」
患「…あ…?やっぱ思い出せない」
ぁ「あ…や?」
患「…!!あやのちゃんだぁ」←私の本名です


そんなやり取りを毎日続けていくうちに、
最近では後ろから声かけただけで「あやのちゃん」と言ってくれるまでになりました。
さすがにこれは嬉しかったですね。




すごく笑顔が素敵な方でした。
いつもニコニコニコニコしていて、時にはそのニコニコ顔で毒舌吐いたりなどもしばしば(笑)
すごく賢い方で色々な知識や、また亡くなられた旦那様のこと、色々お話されました。
誉め上手な方でもあり、お世辞と分かっていてもつい顔がにやけてしまう程の誉めっぷり(笑)


認知症の周辺症状もあり、なかなか目が離せない方ではありましたが、
この笑顔に毎日癒されていた自分がいました。





今日の朝、声をかけると目には涙のあとが、
そしていつもの笑顔で「あやのちゃん、幸せになりなさいね。」と言葉を残し、
次の転院先の病院へ行かれました。



患者様との距離というのはやはり大事なことで、
もしかしたら私はこの方に対し、必要以上の感情を持って接してしまっていたのかもしれません。
それでも、1人寂しい個室での入院生活の中で、
私のことを孫のように親しくしてくれたこと、「あやのちゃんがいたから楽しかったよ」の言葉。
身体機能としては大きな改善は見られませんでしたが、
あの方が少しでもここでの入院生活を快く過ごしていただけていたのなら
私はいちスタッフとしてこんなに嬉しいことはないです。




いつまでも元気でいてほしいです。



<PTぁゃゃ>